北米住宅とひとことで言っても、広いアメリカのことであり、また移民の国という歴史から、さまざまな様式があります。
ここでは、ライフスタイルに合わせて住まいを変えていくアメリカ人の暮らしぶりの一端を垣間見るエピソードをご紹介します。
日本では、昔から「代々受け継いだ土地」への執着があり、先祖が所有していた土地に住み続ける風習がありました。一方、アメリカでは、ライフスタイルに合わせて家から家へ移り住んでいくのが一般的です。結婚したばかりならオフィスに近いマンションを借りる。子供ができたら、郊外の一戸建てを借りたり、建てたりする。そして、リタイヤした後には、夫婦で豊かなライフスタイルを楽しめる物件を求めて移り住む。ざっと、こんな感じです。最近は、日本でも都市から農村へ移り住む人も増えていますが、アメリカでは、それが一般的に行われているのです。
最近では、コミュニティ・タウンと呼ばれるテーマ性のある建売分譲住宅地がブームです。日本の建売分譲住宅と大きく違う点は、同じライフスタイルをもった人々が全国各地から集まってくること。日本から移住した人もいるそうです。
例を挙げると、1棟が2億円の「ハイソな人」のコミュニティ・タウンから、3000万円クラスで中流向けのところなどバリエーションやテーマ性はさまざま。また、一般的にゲートを設け、不審者をシャットアウトして安全な暮らしが保たれます。
実際に視察したラスベガスの高台にある高級コミュニティ・タウンを例にとってご紹介してみます。ラスベガスは砂漠の中にあるので、ここは完全に人工的に造られた空間です。
ラスベガスの高台にある「子供が巣立った夫婦(エンプテイネスターズ)」のための超高級住宅プロジェクト「Del Webb」。床面積が100坪以上、価格は1億円以上です。その内容も豪華。ゴルフ場の中に家がある、といっていいでしょう。他に、フィットネスクラブやプール&スパ、ウェルネス施設、クラフト教室など、老後の楽しみや健康づくりの施設がさまざま用意されています。週末は住人たちがクラブハウスに集まり、ポーカーやビリヤードに興じて、コミュニケーションを深めています。
この「Del Webb」のテーマは「仕事からリタイヤした夫婦が、心身ともに快適で安らげるオアシス」。この価値観を守るためのルールの一つは「介護が必要になった時点で退去する」こと。購入した物件ですから、次の入居者に転売して、次の入居先、例えばケアハウスなどに移り住みます。もう一つが「子供や孫が泊まれる日数を、年間60日以内に制限している」こと。アメリカ的合理主義の象徴のような話ですが、夫婦で楽しめる老後の限られた時間を大切にする、というポリシーを貫くためのルールなのです。
これは、あくまでも豊かなライフスタイルを謳歌するアメリカ人の例です。でも、こんな老後の楽しみ方もあると思えば、夢もふくらみますよね。
日本では、家という「うわもの」の資産価値が社会的に認められにくいのが現状です。しかし、アメリカでは「手入れをきちんとしている家は、購入したときよりも転売するときの方が高く売れる」というのが常識。「いい家=基礎や構造をしっかり造ってある家=資産価値が高まる家」という図式が、日本で常識になる日は果たしていつ来るのだろう? そんなことを考えながらも、新たな住宅の楽しみ方を提案する気持ちが湧いてきます。






